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うたかた。

小説散文ときどき日記

見分け方

三題噺

 仕事で帰りの遅い紗夜を気遣って、「今日は俺が冷蔵庫の物で晩御飯作るから」とSNSでメッセージを送っておいた。

 

「ただいま!ご飯何?」

 

 帰ってくるなり興味津々の彼女をとりあえず椅子に座らせて、俺はひとつひとつ料理を差し出す。今日は和食にした。

 

「まずは、小松菜の煮浸し」
「いただきま……ちょっと待て!これはほうれん草!」

 

 どうやら仕事に疲れてちょっと御機嫌斜めらしい。俺が差し出した皿を見るなり勢いよくツッコミが入った。

 

「根っこが赤いでしょ!あとほうれん草は葉っぱがギザギザした三角形、小松菜は丸くて楕円形です!」

 

 別の意味で叩きのめされた。

 

「うん、味はよし!」
「失礼いたしました」
「分かればよろしい。あとは?」
「湯豆腐」
「絹?木綿?」
「どっちがいいかわからないから両方入れた」
「こんなにたくさんいらない……でもおいしい」
「お褒めに預かり光栄です。えーと、カレイの煮付け?」
「正解!」
「よかった…」
「左ヒラメ右カレイっていうけど、口を見れば一目瞭然だよ。小さいおちょぼ口がカレイ、でっかい牙のある口がヒラメ」

 

 ご飯と味噌汁を出し、ご飯の水加減にダメ出しをされ、味噌汁に入ってる大根の切り方とだしの薄さに怒られたものの、なんだかんだ全部食べてくれた。

 

「俺、疲れた時って和食食べたくなるから作ってみたんだけど、慣れないことはしない方がいいな」
「……ありがとう、おいしかった。ごちそうさまでした」

 

 黙々と食べていた紗夜が箸を置いて、小さく両手を合わせた。次はもう少し怒られないように頑張ろう。

 

 

 

 

(妖怪三題噺様より「小松菜」「赤」「楕円」https://twitter.com/3dai_yokai

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