うたかた。

小説散文ときどき日記

2017-01-05から1日間の記事一覧

小林くん

「おはよう古賀君!」 「……おはよう、」 キラキラと振りまかれる笑顔が直視できなくて、僕はそっと目をそらして挨拶した。けれど彼はもう他の生徒への挨拶回りで忙しく、僕の方を向いてなどいない。 僕は、小林くんが苦手だ。クラスの人気者である彼はいつも…

十八歳、海の底。

男は、私を片腕に抱いて眠っている。触れあっている剥き出しの肌はまだ、十分な熱を持っていて、しっとりと濡れていた。二人でくるまったタオルケットごしに、時折吹き込む冷房の風が心地いい。 男の寝息に合わせて、ゆっくりと呼吸をする。目を閉じて、長い…