うたかた。

小説散文ときどき日記

2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

老人と睡蓮、魚たち。

夢の中で、不思議なおじいさんと会った。 ふと気付くと目の前に女性が立っていた。まるで天女のような美しい女性が、淡々とした声で本来は会話も許されませんが、とそっと私をおじいさんの元へ促した。 どうやらおじいさんに付き従う世話役の人らしい。 ……本…

白い虚空に眠る

「蛇さん、ドーナツ、食べる?」「食えるか!」 何度言えば、こいつは俺に人間の食い物を与えようとするのをやめるのか。いや、今のこいつには前世の記憶がないから無駄なのか。 「神戸に修学旅行で行ってきたの。そのお土産」 太い枝に腰掛け、投げ出した足…

どきどきアート展デート

「琉偉君琉偉君」「なんでしょう紗夜ちゃん」「ちょっとお話があるのですが」 紗夜は俺の事を昔から呼び捨てしているはずだが、突然謎の君付けをはじめた。ので、なにかあるだろうと踏んでいたら、やはり意味深な言葉が返ってくる。心当たりもないのにどきり…

どきどきクリスマスディナー

「ねぇ、紗夜のとなりにさ」「……え?」「外国人の霊がヨダレ垂らしてこっち見てる」「えええええええ」 幼馴染の琉偉はいわゆる見える人である。昔から好奇心旺盛でなんでも知りたがりだった幼い頃の私は、そんな琉偉の見ている世界を事あるごとに面白がって…

幸せな男の話

人は死の直前に見せる表情が一番美しい。その姿を愛おしいとさえ感じるのは、私が狂っているからだろうか。 この仕事を続けているのは、人である私にはこれしか生きる術がないからだ。私は人を壊すことでしか私を証明できない。私を形づくるものはこれしかな…